大型ビジョンの効果測定方法について
大型ビジョンに広告を掲出して効果はあるのか?
屋外広告と大型ビジョンのようなデジタルサイネージは、広告効果の測定が非常に難しいメディア※です。
※屋外広告は街中にある為に、歩行者や通行車両から広告面が見られたのか測定が難しいのが特徴です。
また、大型ビジョンのようなデジタルサイネージは、1社の独占ではなく複数社の素材がローテーションで放映されます。
複数の広告主のCMが繰り返し放映される為に、1社が独占で使用する屋外広告よりも、一段と広告効果測定が難しくなっています。
渋谷のハチ公口の大型ビジョンで効果を検証してみます
大型ビジョンの効果測定の考え方を、大型ビジョン数が最も多い渋谷ハチ公口で検証してみます。
渋谷ハチ公口の大型ビジョンは「渋谷ハチ公口の大型ビジョンの視認率は80%です」と公表しています。
つまり来街者の80%が大型ビジョンを見るという話しです。
このデータを元に検証します。
渋谷ハチ公口の広告効果を考えるのに現状あるデータを整理すると、
- 大型ビジョンの放映時間は1日あたり9時~24時の15時間
- 放映時間内のビジョン視認範囲の歩行者数は30万人(1日あたり)
- 大型ビジョンの注目率は約80%(今大型ビジョンを見ましたか?に対して見ましたの割合が80%)
広告効果を考える上で、現状あるデータは①~③だけになります。
このことから、大型ビジョンの注目人数は、30万人×80%=24万人(1日あたり)というのが基本的な見解です。
見解:「渋谷ハチ公口の大型ビジョンでCM放映すると1日あたり24万人に訴求できます!」
しかし、この見解には注意すべきことは4点あります。
①大型ビジョンは看板と違いビジュアル変更が繰り返される。
大型ビジョンは複数素材を放映することで番組が構成されています。よって、24時間1社のみが掲出される看板とは全く別の媒体として考える必要があります。
大型ビジョンの広告枠の基本パターンは15秒のCM枠が1時間に4回放映されます。
つまり、1時間(60分間)の総枠に対して1分間枠を占有するのが基本の広告モデルです(占有率1/60)
1日あたりのサーキュレーション24万人というのは、大型ビジョンの媒体自体のサーキュレーションであり、一部の放映時間だけを占有する特定のCMの効果を指すものではありません。
上記の見解:「渋谷ハチ公口の大型ビジョンでCM放映すると1日あたり24万人に訴求できます!」は、大型ビジョンの注目率です。
自社の広告が放映されない時間帯の効果は除かなければいけません。
②来街者は帰る
街に来た人は帰ります。
提供されている1日あたり30万人というデータは大型ビジョンの視認範囲の総人数です。
9時~24時までのカウント中に来街者が1人も帰らないことはあり得ません。
つまり、街を回遊している同じ人物を2度カウントしている可能性が非常に高いと考えるのが自然です。
単純に半数とはなりませんが、ダブルカウントを考えると30万人ではなく、6割から7割程度の20万人程度と考えるのが無難です。
③上記の注目率80%は大型ビジョンが3基設置されていた時の数値
渋谷ハチ公口には2017年時点では大型ビジョンが5基設置されています。
上記の注目率80%というデータは、3基のみが設置されていた時期の同時放映した場合の数値です。
現在の5基が設置されている時の調査ではありません。
大型ビジョン数が当時より増えていますので、3基のみ放映した場合のデータは正確ではありません。
また当時はスマートフォンが無く「歩きスマホ」もありませんでした。
スマホの保有率は100%近い時代においては、スマホの普及による注目率の減少も考慮されるべきです(特に渋谷の歩きスマホ率は高い)
④大型ビジョンの増加により、1基の場合から複数基まで注目率は異なる
5基で全て違うビジュアルを放映している場合、1基に対する注目率はかなり低くなります。
当然5基の中で3基のみでしか放映しなかった場合の注目率も80%より低くなります。
よって、上記の注目率80%は、5基全てにおいて同時放映をした場合のみ到達出来る注目率となります。
渋谷ハチ公口を観察した個人的な感覚では、注目率は5基同時放映で60%から70%程度(スマホを見ている人を低く見積もっても40%はいます)
1基のみの放映では、音声が聞き取れない為に10%から20%程度でしょう。
1基のみ放映する場合、最も効果が高いのはシブハチヒットビジョンという大型ビジョンです。
次にパーコストを計算してみましょう!
では、最後に、1人あたりのパーコストを計算してみます。
デジタルサイネージでは不可能とされているパーコストをどう計算すればいいのか?最も現実的な計算方法は下記の通りです。
従来の発表数値で計算してみます。
左から(DHCチャンネル) (Q’seye)(グリコビジョン)(109フォーラムビジョン)
算出の条件
- 大型ビジョンでの放映は同時放映を前提にする(渋谷ハチ公口の4面にて放映を前提にする)
- サーキュレーションはダブルカウントや「歩きスマホ」は無視して30万人のデータをそのまま活用
- CM放映は基本枠1時間あたり15×4回放映パターンにて算出(60分に対し1分間を専有)
- 注目率は80%をそのまま適用
- ※本来であれば5面全てでのパーコストが必要ですが、現時点では4面の同時放映しか対応できないので、4面のみで計算します。
この条件において15秒CMが1時間に4回放映された時のパーコストを考えてみます。
15秒CMが1時間に4回放映された場合の占有率は1分/60分となります。
この条件から30万人×1分/60分=5000人と考えるのは乱暴になります(CMが放映される15秒毎に歩行者は全て入れ替わらない為)
つまり、1日の歩行者数30万人という総合計の数値から、特定のCMが放映された瞬間のサーキュレーションを算出するのは不可能です。
では、どうすればいいいのでしょうか?
それは、1日の総人数からではなく、
CMが放映される、そのタイミングに視認範囲に歩行者は何人いるか。を算出できれば正確な効果測定に近くなります。
では、その瞬間に歩行者がどれだけいるか?を計算してみます。
渋谷ハチ公口のサーキュレーション数30万人は、渋谷ハチ公口の信号待ちの人数の総合計の数値です。
渋谷ハチ公口の信号のサイクルは1時間あたり26回です。
信号1回あたりの人数を定期的に測定して、その人数に信号の回数26回を掛けて1時間当たりの人数としています。
そして、1時間当たりの人数×15時間分が1日のサーキュレーションです。
つまり、信号待ちの人数×26回×15時間=30万人となっています。
ここから逆算すると信号待ちの平均人数が計算できます。その人数が滞留人数ですのでCMを放映した時のサーキュレーションと想定できます。
15秒CM放映時の視認範囲のサーキュレーション数
上記内容により逆算すると、
30万人÷15時間÷26回(信号サイクル)=約770人。つまり、渋谷ハチ公口には平均して770人が滞留している。
と計算することができます(CM放映時のサーキュレーションは平均して770人と想定できます)
渋谷ハチ公口4画面放映時のパーコスト
サーキュレーションの想定ができましたので、1人あたりのパーコストを計算してみます。
放映料金の合計÷総サーキュレーション(770人×総放映回数×注目率)で計算できます。
《放映料金・・・基本枠を1週間放映の場合》
- DHCチャンネル・・・・・¥784,000
- Q’seye・・・・・ ・・ ¥1,000,000
- グリコビジョン・・・・・・¥850,000
- 109フォーラムビジョン・・ ¥798,000
- 合 計:¥3,432,000
《CM総放映回数》
- 15秒×4回/1時間(60回/1日)×7日間=420回
《総サーキュレーション》
- 770人×総放映回数(420回)=323.400人
想定数値が計算出来ましたので計算してみましょう。
¥3,432,000÷(総サーキュレーション323,400人×注目率80%)=13.26円。
1人あたりのパーコストは?
現時点のデータから算出可能な1人あたりのパーコストは13.2円となります。
※上記同時放映の計算に含まれないシブハチヒットビジョンによる注目率の低下、スマホによる注目率の低下、ダブルカウントによるよるサーキュレーションの低下も追加で加味すべきですが、
現時点では正確な数値が不明な為、省いています。
13.2円という数値はテレビと比較すると高価になります。
しかし、「家のテレビではなく街中の大画面で見せた」「交通広告との相乗効果を見込んでいる」「渋谷という街中で訴求をしたかった」
ということに価値を見出すことができれば掲出する価値はあります。
渋谷の大型ビジョンの活用をご検討の場合は、渋谷ハチ公口大型ビジョンを費用対効果順にランキングも参考にしてください。
大型ビジョンの効果的な活用方法はこちらです。
大型(街頭)ビジョン設置の考え方も紹介しています