~屋外広告の効果をデータと現場感覚で読み解く~
なぜ大型ビジョンの効果測定は難しいのか?
大型ビジョンや屋外広告は、駅前・繁華街といったサーキュレーションに優れたエリアに掲出されるのが一般的なメディアですが、広告効果の測定が非常に難しいとされてきました。
- 通行者が実際に見たのかが不明
- 複数の広告主によるローテーション放映
- 接触時間や印象の濃度のバラつき
このような理由から、出稿後の効果を具体的に把握する手段が乏しく、検証すること自体が困難で、そのまま評価されずに終わってしまうケースも多く見られました。
現代の進化:位置情報データの活用
ここ数年で、ドコモやソフトバンクなど携帯キャリアの位置情報データを活用した広告効果測定が一般化してきました。
これにより、以下のような分析が可能となっています。
- 渋谷駅前で一定時間滞在した人の推定人数(単なる通過ではなく、広告に接触する可能性の高い滞在者)
- 滞在者の推定属性(年代層・性別・居住エリアなど、匿名化された統計情報)
- 広告接触後に行われたと推測されるWeb検索やEC訪問などの行動(他データとのクロス分析が前提)
ただし、このデータにも限界があります。
- デバイスの位置情報には数十メートル程度の誤差が生じることがあり、正確な滞在位置の特定には限界がある
- 視認そのもの(実際に広告を見たかどうか)までは位置情報だけでは判別できない
- 滞在時間が長い場合や周辺での回遊などにより、同一人物が複数回カウントされる可能性がある

つまり、より「リアルな視認数」や「実効パーコスト」は、提供されるデータを手がかりにしつつも、最終的には自分自身の現場感覚や肌感を加味して判断する必要があるのです。
『数値と感覚の間にある広告効果』を見極める
現在の広告効果測定においては、携帯キャリアの位置情報データを活用した分析が主流になりつつあります。 しかしこのデータも、たとえば2か月前の記録をもとにしたものであったり、天候など当日の環境変化を反映していなかったりと、リアルタイム性には限界があります。
技術が進化しても、位置情報データはあくまで間接的なものであり、「その場で広告が見られたかどうか」を正確に示すものではありません。 したがって、こうした不完全なデータを基にしながらも、現場の実感や状況把握を加えた判断が必要になります。
結局のところ、多くの広告主が重視しているのは「どれだけの人に届いたか」という数字以上に、 「屋外広告ならではのインパクト」や「街での視認によるブランドの印象強化」といった感覚的・情緒的な要素が今でも重視されているのが現実だったりするのです。
このような状況下において、大型ビジョンの効果測定は単なる数値分析だけでなく、街の空気感やターゲットの生活導線を読み取る視点が求められます。
感覚的な判断が広告出稿を支える現実
※前項で述べたように、現在の屋外広告の効果測定には携帯キャリアの位置情報データが使われていますが、その精度やリアルタイム性には限界があるのが実情です。
一方で、広告主側の出稿判断においては、依然として「街の感覚」や「場所のイメージ」が重視されています。 たとえば、「新橋にいるのはビジネスマンが多い」「渋谷は若者の街」といった感覚的な把握は、わざわざ属性データに頼らなくても十分に共有されている現場感です。
実際、多くの広告出稿はこのような現場の経験や感覚をもとに行われており、結果として、的確なターゲティングが行われているのも事実です。
つまり、屋外においてはデータはあくまで出稿判断の“補助”であり、主役ではありません。
今なお「この場所で広告を出せばこういう層に刺さるはずだ」という直感や経験則こそが、最も強力な判断軸になっている現実があります。

効果測定を数字だけで評価するのではなく、場所や文脈、ターゲットの空気感までを読み解いた上で判断することが、屋外広告で成果を出すための本質的な視点です。
結論
携帯キャリアの位置情報データを用いて、サーキュレーションやターゲティングを分析する手法は進化していますが、それに頼りすぎると屋外広告本来の魅力である「インパクト」や「イメージ訴求」が軽視されがちです。
つまり、ネット広告のようにターゲティングを重視するあまり、掲出するサイネージの「見え方」や「存在感」といった本質的なビジュアル要素が二の次になってしまうケースが出てきています。
たとえば、ターゲット属性を重視した結果、視認性が低いビルの最上部などにある小さな画面で放映されるような配置になることもあります。
本来、屋外広告は「どこで、どう見せるか」によってブランドイメージや訴求力が大きく変わる媒体です。 そのため、場所や視覚的インパクトを犠牲にしてまでデータ主導のターゲティングにこだわることは、屋外メディアの本質を損なうリスクもあるのです。
2025年現在、データはあくまでも参考値であり、広告出稿においては実際に現地に足を運び、その場の雰囲気や人の流れ、視認性などを体感する「肌感覚」が欠かせないとする考え方が依然として有効です。
OOH広告の真価は、単に何人に届いたかではなく、「どんな環境で、どのように印象づけられたか」という、文脈と体験を重視した設計にあるのです。
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