日本の広告費2019年度を検証します。
日本の広告費2019年度版が電通より発表されました。
昨年度予想した通り、インターネット広告費がテレビ広告費を抜き広告費に占めるシェアで1位となりました。
広告業界にとっては大きな節目の年になったと言えます。
例年通り、2005年度から2019年度までを比較した最新の表を作成しました。
ダウンロードをして表を見ながら検証するといいでしょう。
前年比(2018年度比)と、2005年度比の2パターンで検証してみます。
マスメディアからインターネット広告に推移する状況が良く理解できるはずです。
日本の広告費2019年度のポイント(前年比較)
- 2019年度の日本の広告費は、
新しい計算方法による①6兆9,381億円(106.2%)と従来型の計算方法による②6兆6,514億円(101.9%)に分かれます。
電通による正規の発表は前者の①と理解できますので、今年度より①をベースに検証することになります。
※①今年度より、新しい基準として「物販系ECプラットフォーム広告費:1,064億円」と「イベント:1,803億円」が追加されています。また、電話帳も「フリーペーパー&マガジン」に含まれるようになりました。
消費増税による個人消費の落ち込みや世界経済の不透明な部分はありましたが、好調な企業業績に比例して8年連続のプラス成長を達成しています。 - マスメディアの4媒体は、衛星関連も含めた合計で前年比96.6%。全てのメディアがマイナスとなりました。
(地上波テレビ広告97.2%、衛星メディア関連99.4%、新聞広告95.0%、雑誌広告91.0%、ラジオ広告98.6%)
ほぼ前年と同様で推移しています。 - インターネット広告は119.7%となり、前年の116.5%を上回る2桁成長を維持、一気にテレビ広告を抜くことになりました。
前年に続き、運用型広告・動画広告が好調と言えます。 - プロモーションメディアも昨年同様にプラスとなっています(今年度より追加されたイベントが大きく貢献)
屋外広告及び交通広告が前年比でプラスとなっています。サイネージ化が大きなプラス要因でしょう。
インターネットでは訴求出来ない層へのアプローチとしてDM関連も好調と言えます。
また、今年度で特筆すべきは『タクシー広告』の好調さです。
年間を通じて枠が取れない状況が続き、BtoBの訴求を重視する企業からの申込が絶好調でした。
広告媒体別の推移
それでは、広告費の推移について、〖テレビ広告〗〖新聞広告〗〖雑誌広告〗〖ラジオ広告〗〖インターネット広告〗〖プロモーションメディア〗
に分けて検証してみましょう。
テレビ広告
テレビ広告費は、地上波が1兆7,345億円。
前年比で97.2%となっています。ほぼ500億円のマイナスとなります。
また、衛星メディア関連が1,267億円で前年比99.4%となりました。
2017年度に、成長の鈍化が始まり、昨年度に続き2019年度もマイナスとなりました。
テレビを見ないと言われる若年層の取り込みが出来ていない状況です。
5Gの普及やYoutubeの普及により、この傾向は今後も続くでしょう。
新聞広告
新聞広告は、4,547億で前年比95.0%となりました。
昨年度5,000億円を割り込みましたが、4,500億円を割り込むのも時間の問題です。
3年以内に4,000億円を割り込むことになるでしょう。
新聞広告は、消費増税などの公共的な告知や、選挙・イベントに支えられています。
2020年度はオリンピックという大きなイベントがありましたが、延期になり今年度以上のマイナスは避けられなくなりました。
前年比で90%台前半が良い所でしょう。
デジタル関連で150億円を計上していますが、紙のマイナスと比較すると貢献度は大きくありません。
雑誌広告
雑誌広告は、1,675億年となり(前年比91%)2019年度も非常に厳し状況が続いたと言えます。
但し、デジタル化はマスメディアの中では大きく成長しており(新聞の150億円に対して、405億円)
市場規模から考えると、デジタル化が成功しかけていると言えるかもしれません。
雑誌は、素晴らしいコンテンツを生み出しています。
紙が売れない中でコンテンツの露出先として、デジタル化で成功する可能性が大いにあります。
【コンテンツが全て】と言われるインターネットの世界では、出版社の可能性は非常に高いのです。
今後は、出版社のコンテンツが多方面で展開されるようになるでしょう。
ラジオ広告
マスメディアの中で、最も可能性のあるラジオ広告。
2019度は1,260億円(前年比98.6%)となりました。
しかし、このマイナス幅は大きな問題ではありません。
こブログで繰り返しお伝えしていますが、ラジオの将来は暗くありません。
Webとの連動、イベント連動など様々な可能性があります。
インターネット広告
インターネット広告は2兆1,048億円となり前年比119.7%を達成。
全体のテレビ広告を抜いて首位になりました。
日本の広告費の30%を占めるようになりましたので、
インターネット広告無しで広告のプランニングは成り立たなくなっていると言えます。
インターネット広告を分類していくと、
純粋なインターネット広告媒体費は、1兆6,630億円(114.8%)となり、
さらに分類すると、
運用型広告が、1兆3,267億円となり全体の80%を占めています。
インターネット広告=運用型広告と表現してもいいでしょう。
続いて、予約型広告2,314億円、成果報酬型広告1,049億円と続きます。
2020年度以降も運用型広告を中心に成長は続くでしょう。
また5Gの普及により、動画関連の成長に拍車が掛かる可能性もあり、要注目と言えます。
プロモーションメディア関連
屋外広告と交通広告のサイネージ化が目立つ年となりました。
オリンピックに向けて一気に普及が進んだと言えます。
この傾向は、オリンピックの延長に関わらず今後も継続することになるでしょう。
この分野はオリンピックの有無に大きく影響されます。
オリンピックが開催予定の2021年度に向けた取り組みは要注目です。
また、2019年度で忘れてはいけないのが、【タクシー広告】です。
成長率では、インターネット広告を上回る市場となりました。
要因は、BtoC広告だけでなく、BtoB広告のニーズの高さです。
タクシー広告というのは、経営者を中心にした富裕層の乗車が見込めます。
そこで、人材募集や人材評価、コンピューターの導入などのインフラなど、対経営者向けの広告が大幅に増加。
満枠状態が続き、広告が取れない状況が続く1年となりました。
合わせて、長時間の訴求が可能となる為(1回の乗車平均時間は18分間)有益なコンテンツなどによる視聴率の向上も見られ、
クライアントのリピートや長期契約も目立ちました。
日本の広告費2019年度のポイント
2019年のポイントは、インターネット広告に尽きるでしょう。
2005年当時は、3,777億円で新聞広告の30%程度、対テレビ広告では20%程度だったインターネット広告が、
2兆円を突破、一気に首位になりました。
2年後には、マス4メディアの合計よりも市場が大きくなることは間違いないでしょう。
テレビ広告はマイナスが続いていますが、リーチ数の多さ、オリンピックなどのスポーツ観戦などの相性から急激なマイナスはありません。
ラジオ広告もラジコなどの普及により大きなマイナスはありません。雑誌広告は比較的好調なデジタル化の推進がポイントでしょう。
新聞広告は、進んでいるとは言えないデジタル化をどう進めるか?が大きなポイントでしょう。
このままでは、あと数年以内に統合を中心とする大きな変革が起きることは間違いありません。
ヤフーや楽天に新聞社が買収されることも現実味を帯びてきています。
結果として、企業が合理化されリストラが推進され今の体制は破壊されることになるでしょう。
インターネット広告の課題
絶好調のインターネット広告ですが、課題もあります。
それは、掲載スペースです。
ネット上とはいえ、良質な広告スペースには限界があります。
市場の成長に比例して、2流以下の広告スペースに広告が掲載されるケースも増加します。
ターゲティングされているとはいえ、企業としては、質の悪いスペースでの広告掲載には積極的ではありません。
この課題を解決するための、面開拓をどうするか?アナログな世界とどのように連動していくか。
この課題を解決する為の取り組みが2020年度以降開始されるでしょう。
その第一弾としてヒントになるのが、ヤフーと営団の連動です。
今後このような取り組みが加速していくことは、100%間違いありません。
『インターネット広告は、PCやスマホだけでは無くなる』ということは要注目しておきましょう。
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