コラム

ピーチジョンと炎上広告

毎年必ず発生する【炎上広告】
2019年も、新年早々に『ピーチジョン』と『SEIBU SOGO』の広告が炎上しました。

『SEIBU SOGO』は賛否が分かれる内容で、ほぼ半々でしょう。
完全に好き嫌いの世界での炎上広告です。

『SEIBU SOGO』のような広告は、過去にも、多くの企業の広告がで発生していますが、

今回の『ピーチジョン』に関しては、今までとは全くレベルが違います。

 

『ピーチジョン』の炎上広告は、他の炎上広告と何が違うのでしょうか?

 

 

『ピーチジョン』過去の炎上広告とは

 

今回炎上した広告は、【LOVE POTION(ラブポーション)】というサプリメントです。

2018年11月から、3000円(税別)で発売開始。

発売から2か月足らずで発売中止に追い込まれました。

 

 

過去の炎上広告例

 

ピーチジョンの炎上広告を考察する前に、他社の代表的な炎上広告を整理してみましょう。

 

 

サントリー【頂(いただき)】

 

サントリーの【頂】はテレビCMではなくネット広告に動画CMを放映して、一気に炎上しました。
一言でいうと「下品」「不愉快」だった。ということです。

出張先で出会った女性数名が『コックぅ~ん!しちゃった』と発言するCMです。
当然、女性を中心に炎上しました。削除までわずか1日だったと記憶しています。

アサヒビールも【クリアアサヒ】で、松下奈緒の『リッチしよう』CMで炎上しましたが、内容はほぼ一緒です。

ビール会社2社が同じ失敗を繰り返しています。
中年の男の注目を集める為には、ちょっとした『下ネタ』が効果的だと思っているのでしょうか。

女性目線が抜けています。

 

ダイナースカード

ダイナースカードは、雑誌(ウェブ版)記事広告で炎上しました。
メディアは「GOETHE」(幻冬舎)です。
非常に「不快感」を読者に与えてしまった炎上広告です。

広告内容は、美人秘書3人が、持つべきクレジットカードについて会話をしている想定です。

  • 通販サイト系、交通系、買い物系のカードはダメ
  • 普通のゴールドカードやブラックカードもダメ
  • 百貨店やスーパーのクレジットカードもダメ
  • ポイントを貯めることに、こだわる男はダメ
  • ゴールドカードを嬉しそうに出す男もダメ
  • 一方で、ダイナースもってる人は凄い!という流れです。

こんな感じ↓

  • 「通販サイトのカードでいばられてもね(笑)」
  • 「男性が交通系の機能がついたカメラ屋さんのカードで支払った時は、気まずく感じてしまって見ないふりをしました(笑) 」
  • 「百貨店とかスーパーとかのカードしか持いない人は『この人は何にもこだわらない人なんだろうな』と思っちゃう 」
  • 「いまどきゴールとかブラックとかのカードを素敵だと思う女はいない」
  • 「ダイナースカードを使っている人は、知的できちんとしていて信頼できる人」

炎上やむなしですね。
しかも、この件は後処理が非常にお粗末で〖火に油を注ぐ〗結果となりました。

 

『 今回の件は、『GOETH』から持ち込まれた提案であり、企画・制作は一任しており、当社は指示や誘導を行って下りません』

この対応は最悪です。
この発言で炎上が鎮まると思ったのであれば危機管理能力は0です。
記事広告(タイアップ広告)というのは、出版社・広告代理店・広告主で掲載内容について何度もやり取りをしてから掲載されます。

掲載料を支払っている広告主のチェックなしで掲載されることはありません。

にもかかわらず、生活者からすれば
『出版社が勝手に掲載したことであり、弊社は悪くないけど、削除しました』と受け止められます。
生活者を広告の制作過程を知らない素人だと思ってはいけません。

炎上広告の掲載から謝罪までの、悪い対応マニュアルとしては最高の例でしょう。

 

 

資生堂【インテグレート】

資生堂の【インテグレート】も炎上広告の代表例です。

CMは2話。

  1. 1話目は25歳になった女性3名が主役。「もう女の子ではない」「25歳の女性は“ちやほや”されない」
  2. 2話目は男性1名が主役。「頑張っている疲れが顔に出ているうちはプロにはなれない」

という流れです。

25歳を過ぎたら女の子ではない。という発言も問題ですが、特に炎上したのは2話目です。

『女性は疲れてもいけないの?』『女性は男性の前ではいつも元気じゃないといけないの?』
と女性の反感を買いました。
資生堂の伝えたい意図は、全く違っていますが、炎上しても不思議ではありません。

 

で、【ピーチジョン】に戻ります。

 

ピーチジョン【ラブポーション(LOVE POTION】の炎上広告とは

上記の例や良くある炎上広告は、感情的な問題です。
いずれも、好き嫌いの世界です。ダイナースは別としても、炎上だけでなく肯定的な意見もあり賛否が分かれます。

しかし、ピーチジョンの【ラブポーション】は、普通の炎上広告とは次元が異なります。

 

ラブポーションは、サプリメントですが、いわゆる【媚薬】です。

 

サプリメントは口に入れるもの!・・・・これポイントです!

 

今回の【ラブポーション】の広告内容を、まとめると。

  • Lesson1:こっそり飲ませる。お菓子や料理にこっそり色仕掛け。気づく?気づかない?の駆け引きを楽しめそう!
  • Lesson2:ラブポーションを知って飲むことで、かえってロマンチックムードが高まる。ブラセボ効果を利用するのも手。恋や愛の面でのスパイスとして役立てて(ブラセボ効果とは媚薬効果のこと)

となります。

しかも、こっそり入れる為の料理レシピも、ご丁寧に動画で紹介しています。

 

 

これって、どこが問題か?分かりますか??

 

ピーチジョン【ラブポーション】の問題点

 

ざくっと、問題点を上げてみましょう。

  • 相手の了解なしに、こっそり飲まることを前提にしている(推奨している)
  • 犯罪を誘発する可能性がある
  • 成分によってはアレルギーで取り返しのつかないことがあり得る

 

まず、Lesson1として、相手の同意もなく、こっそり飲ませることを推奨しています。

口から体内に入れるサプリメントを相手の了解なしに、
こっそり飲ませる行為はあり得ません。
しかも、いわゆる媚薬です。

表現の問題ではなく、ほぼ犯罪の世界です。
睡眠導入剤などにエスカレートしても不思議ではありません。

また、この商品にはココア成分が含まれています。
世の中には、多くのココアアレルギーの方がいます。
ココアアレルギーの方にこっそり飲ませたらどうなるか?いわゆる“アナフィラキーショック”により死亡する可能性すらあります。

なぜ、こんな簡単なことに気づかなかったのでしょうか?不思議でなりません。

 

まとめ

ピーチジョンの【ラブポーション】に関しては炎上して良かったのかもしれません。
販売を継続していたら、犯罪や死亡事故などの社会問題を引き起こしていたでしょう。

しかし、今回のCMが、なぜ普通に世の中に出てしまったのか?
なぜ、誰も止めることができなかったのか?

「こっそり飲ませる」ことに問題があると誰も気づかなかったのか?

検証が必要でしょう。

ワンマンなのか?会社が若すぎるのか?広告代理店の機能が働いていないのか?のいずれかでしょう。

 

 

謎だらけでしたが、ピーチジョンはワコールの100%子会社とは思えない危機管理能力の会社かもしれません。

ピーチジョンのホームページを見ると納得できます。

ピーチジョンは、正月早々にホームページでは大々的にセール告知をしています。
今回の謝罪に関しては、ホームページの下部に、地味に1行あるだけです。

今回の件を、ただの炎上広告だと認識している可能性があります。
事の重大さを認識していれば、当面の間は、ホームページに謝罪広告を大きく掲載するのが普通の感覚です。

 

 

 

インターネットの普及に伴い、多くの企業がテレビCMから安価なネットの動画広告を活用するようになりました。
当然、製作費用も大きく減らしています。
その結果として、今後も炎上広告は増えることはあっても、減ることはないでしょう。

多くの炎上広告は女性に対する配慮が足りていない特徴があります。
女性の立場になり、慎重に幾度も女性によるチェックを重ねる慎重さが必要でしょう。

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