テレビドラマの人気を数値で示す視聴率には、「世帯視聴率」と「個人視聴率」の二つの指標が存在します。
これらの指標の違いを理解することで、番組の本当の価値や視聴者の動向をより正確に把握することができます。
本日は、視聴率の仕組みとその違いについて詳しく説明いたします。
世帯視聴率と個人視聴率の違いとは?
では、最初に「世帯視聴率」「個人視聴率」の違いについて説明しましょう!
世帯視聴率の仕組み
世帯視聴率は、特定の番組が調査対象の家庭(世帯)でどれくらい視聴されているかを示す指標です。
例えば、世帯視聴率が5%の場合、調査対象の世帯のうち5%がその番組を視聴していたことを意味します。
ただし、世帯視聴率は家族単位での視聴を反映するため、世帯内の個々の視聴者の嗜好は反映されません。

つまり幅広い家族構成の中の誰が見ていたか?までは分からないということです。
例えば、日本の総世帯数が約5,300万世帯とすると、世帯視聴率5%の番組は約265万世帯で視聴されていたことになります。
これに1世帯あたりの平均人数(約2.3人)を掛けると、約609万人が視聴していたと推定できます。
しかし、1世帯あたりの平均人数が約2.3人の全員(家族全員)が同じ番組を視聴しているとは限りません。
例えば、母はテレビで番組を視聴しているが、父はまだ外出中だったり、子供はスマートフォンで別の動画を見ている可能性があります。
このように、世帯視聴率では実際の個人の視聴行動が必ずしも反映されず、家庭単位の視聴傾向として扱われるため、視聴者数の実態とは異なる状況になってしまいます。

世帯視聴率は、従来のテレビの視聴スタイルに基づいた指標であり、家族がリビングのテレビを一緒に見ることを前提としています。そのため、世帯視聴率は「古い考え方」と言える側面があります。しかし、家族で楽しむことが多い番組(例えば、大型スポーツイベントや年末特番など)では、今でも重要な指標と考えて良いという考え方も存在します。
個人視聴率の仕組み
個人視聴率は、調査対象の個人がどの程度その番組を視聴したかを示す指標です。
例えば、個人視聴率5%は、調査対象となる個人のうち5%が番組を視聴していたことを意味します。これにより、特定の年齢層や性別など、より詳細な視聴データの分析が可能になります。
世帯視聴率と個人視聴率の調査方法
それでは、この2つの視聴率はどのように測定されるのでしょうか?
その調査方法について説明いたします。
世帯視聴率の調査方法
世帯視聴率は、特定の調査機関が選定した「視聴率測定世帯」によって計測されます。
具体的には、テレビに専用の測定機器(ピープルメーター)を設置し、各世帯がどの番組を視聴しているかを記録します。
このデータを集計し、調査対象世帯のうち何%が特定の番組を視聴していたかを算出することで、世帯視聴率を導き出します。
- 視聴率測定世帯の選定: 視聴率調査を行う会社(日本ではビデオリサーチ社が有名です)が、日本全国の世帯を対象に、地域や世帯構成などの偏りが出ないように無作為に抽出します。
- ピープルメーターの設置: 選定された世帯には、テレビにピープルメーターと呼ばれる測定器が設置されます。
- データの収集: ピープルメーターは、テレビの電源のオンオフ、チャンネル、視聴時間などを自動的に記録します。
- 集計: 記録されたデータは、調査会社に集められ、統計処理されて世帯視聴率が算出されます。
個人視聴率の調査方法
一方、個人視聴率は、視聴世帯内の各個人の視聴行動を記録することで測定されます。
ピープルメーターには、家族全員が自分専用のリモコンボタンを持ち、それぞれがどの番組を見ているかを登録できる仕組みが備わっています。
これにより、年齢や性別ごとの視聴傾向を詳細に分析することが可能になります。
- 個人視聴ボタン: ピープルメーターには、世帯の各メンバーに対応したボタンが用意されています。
- 視聴者の登録: テレビを見る際に、視聴者は自分のボタンを押して視聴開始を登録し、見終わったら再度ボタンを押して視聴終了を登録します。
- データの収集: 誰が、どの番組を、どの時間帯に見ていたのかというデータが収集されます。
- 集計: 収集されたデータは、年齢や性別などの属性ごとに集計され、個人視聴率が算出されます。
このように、世帯視聴率は「世帯単位」でのデータを反映し、個人視聴率は「個人単位」での視聴データを細かく分析できる仕組みになっているのです。
また、近年では、テレビ以外のデバイスでの視聴状況を把握するための調査方法も開発が進んでいると言われています。
ドラマ視聴率のケーススタディ
では、次に番組を想定し、ケーススタディとして説明いたします。
若者向けドラマの視聴率の特徴
例えば、学園ドラマや恋愛ドラマなどは、世帯視聴率が5〜6%と低めに見えることが多いと言われています。
しかし、これらのドラマは若年層をターゲットにしているため、個人視聴率の観点では一定の成功を収めているケースが多々あります。
つまり、若者に人気がある作品であっても、世帯視聴率だけではその評価を適切に判断できないのです。
高齢者向け番組と若者向け番組の違い
例えば、「ポツンと一軒家」のような番組は、高齢者層に人気があり、世帯視聴率が高い傾向にあります。しかし家庭内の子供は見ていない可能性があります。
一方、最近の若者向けの恋愛ドラマや配信サービスで話題の作品は、若年層に支持されており、個人視聴率が高いという特徴があります。
このように、視聴率を分析する際は、どの視聴者層が番組を見ているのかを考慮する必要があります。
視聴率50%の誤解を解く
時々「視聴率50%=人口の50%が見ている」という誤解がありますが、これは正しくありません。視聴率は調査対象のサンプルから算出された割合であり、全人口に直接適用できるわけではありません。
例えば、紅白歌合戦では「国民の半分が見た」と言われることがありますが、そのようなことはありえません。なぜなら国民の何割かは外出しているからです。
この50%とは、実際にはどのように計算されるのでしょうか?
日本の総世帯数が約5,300万世帯とすると、世帯視聴率50%の番組は約2,650万世帯で視聴されていたことになります。これに1世帯あたりの平均人数(約2.3人)を掛けると、約6,095万人が視聴していたと推定できます。
しかし、この数値も実際の視聴状況とは異なる可能性があります。例えば、母はテレビで紅白歌合戦を見ているが、父は初詣に出かけていたり、子供はカウントダウンコンサートを楽しんでいたりするかもしれません。このように、視聴率の数値は全員が画面の前で見ているとは限らず、実際の視聴人数とは異なることを理解することが重要です。
つまり、世帯視聴率の調査というのは、「家族が全員テレビの前にいる」という前提で行われています。
しかし、現代では家族それぞれが異なるデバイスを使ってコンテンツを楽しむことが一般的になり、この前提が時代に即さなくなってきています。
そのため、視聴率だけで番組の人気を判断することには限界があり、ストリーミング視聴やSNSでの話題性など、他の指標も重要視されるようになってきているのです。
世帯視聴率と個人視聴率のまとめ
これからの視聴率の考え方!
今後、テレビ番組の評価は世帯視聴率だけでなく、個人視聴率やストリーミング再生数など、多角的なデータを基に分析されなければ、正確なデータとはいえなくなるでしょう。
特に若年層をターゲットとするコンテンツは、従来の視聴率だけでなく、デジタル視聴データとの組み合わせによる総合的な評価が必要になります。
視聴率は単なる数字だけを見るのではなく、世帯や個人の状況、番組の内容を加味して多角的に考えなければならないのです。
そして、他のデバイスでの視聴データやSNSでの反応などを組み合わせて効率的に分析する仕組みや能力が求められています。
これが今後の大きな課題となり、視聴率の在り方そのものが変化していく可能性があるでしょう。
テレビ視聴の新しい考え方(マルチスクリーン)に続きます。