リテールメディアとは?仕組み・種類・市場規模・事例をわかりやすく解説【2026年版】

マスメディア・広告媒体

リテールメディアとは、小売企業が保有する店舗、ECサイト、アプリ、会員情報、購買データなどを広告媒体として活用する仕組みです。

代表例には、ECサイトの検索結果に表示されるスポンサー商品、小売アプリで配信されるクーポン、スーパーやコンビニの店頭デジタルサイネージなどがあります。

これまで広告媒体を購入する側だった小売企業が、自社の売場やデータを活用し、メーカーなどへ広告商品を販売する点が大きな特徴です。

購買に近い場所で広告を届け、広告接触後の購入まで確認しやすいことから、リテールメディアは広告業界の成長分野として注目されています。

一方で、広告費を支払った商品ばかりが目立つことや、広告と店舗のおすすめの区別が分かりにくくなるなどの問題も考えられます。

この記事では、リテールメディアの意味、仕組み、市場規模、種類、事例、メリット・デメリット、効果測定の注意点まで、広告業界の現場目線で分かりやすく解説します。

リテールメディアを簡単にまとめると

  • 小売企業の店舗・EC・アプリ・データを広告媒体にする仕組み
  • 商品を買う場所に近いタイミングで広告を届けられる
  • 広告接触と購買データを結び付けやすい
  • 小売企業にとって新たな広告収入になる
  • 市場の中心は店頭広告ではなく、ECサイト内の広告

リテールメディアとは

「リテール」は、日本語で小売を意味します。

つまりリテールメディアは、スーパー、コンビニ、ドラッグストア、家電量販店、ECモールなどの小売企業が運営する広告媒体です。

広告が配信される場所は、実店舗だけではありません。

  • ECサイトの商品検索結果
  • 小売企業のアプリ
  • メールマガジンやプッシュ通知
  • デジタルクーポン
  • 店頭デジタルサイネージ
  • 商品棚やレジ前の広告
  • 店内音声広告
  • 購買データを活用した外部サイトへの広告配信

リテールメディアの基本的な仕組みには、主に三つの立場があります。

立場 役割
小売企業 店舗、ECサイト、アプリ、会員・購買データを広告商品として提供する
広告主・メーカー 広告費を支払い、商品やサービスを生活者へ訴求する
生活者 買物中に広告、クーポン、商品情報などへ接触する

小売企業が持つ最大の強みは、実際に何が購入されたかという購買データを持っていることです。

広告を表示して終わるのではなく、広告に接触した人が、その後商品を購入したかまで確認しやすい点が、一般的な広告媒体との違いです。

従来の店頭販促やデジタル広告との違い

店頭で商品を目立たせる施策は、リテールメディアが登場する以前から存在していました。

POP、特売、試食、サンプリング、棚の位置、メーカー協賛のキャンペーンなどです。

そのため、「昔からある店頭販促と何が違うのか」と疑問を持つ人もいるでしょう。

比較項目 従来の店頭販促 リテールメディア
主な目的 店頭での販売促進 広告商品として販売し、収益化する
主な接点 実店舗が中心 店舗・EC・アプリ・外部広告
利用データ POS売上が中心 会員・購買・接触・行動データ
効果測定 施策前後の売上比較 接触者の購入や再購入まで分析
収益の考え方 商品販売を増やすための費用 小売企業の広告事業として収益化

リテールメディアは、従来の販促をすべて置き換えるものではありません。

以前からあった売場、広告枠、会員データ、購買データを一つの広告事業として統合し、広告主へ販売する仕組みと考えると分かりやすいでしょう。

なぜリテールメディアが注目されているのか

リテールメディアが拡大している背景には、広告主、小売企業、デジタル広告市場の変化があります。

購買に近い場所で広告を出せる

生活者が商品を検索しているときや、店舗で商品を選んでいるときは、購入意向が高い状態です。

リテールメディアは、認知だけでなく、購入直前の意思決定へ働きかけられる広告として評価されています。

購買データを活用できる

小売企業は、ポイントカード、会員アプリ、ECサイト、POSなどを通じて、実際の購買情報を持っています。

どのような人が、いつ、どの商品を購入したかという情報を活用することで、広告の対象や効果を分析しやすくなります。

外部データへ依存しにくい

プライバシー規制やプラットフォームの方針変更によって、第三者のデータだけに依存した広告配信は難しくなっています。

そのため、小売企業が顧客との直接的な関係から取得したファーストパーティデータの価値が高まっています。

小売企業が新たな収益源を求めている

小売業は、一般的に商品販売だけで大きな利益率を確保しにくい業種です。

自社のECサイト、アプリ、店舗、データを広告商品として販売できれば、商品販売とは別の収益源を作れます。

この小売企業側の事情も、リテールメディア市場を拡大させる大きな要因です。

国内リテールメディアの市場規模【2026年版】

CARTA HOLDINGSとデジタルインファクトが2026年1月に公表した調査によると、2025年の国内リテールメディア広告市場は6,066億円です。

2029年には、1兆3,174億円まで拡大すると予測されています。

項目 市場規模
2025年 国内市場全体 6,066億円
2025年 EC事業者領域 5,236億円
2025年 店舗事業者領域 830億円
2029年 国内市場予測 1兆3,174億円

ここで注意したいのは、リテールメディア市場の大半が、店頭デジタルサイネージではないことです。

2025年の市場6,066億円のうち、EC事業者の広告が5,236億円を占めています。店舗事業者は830億円で、その内訳はデジタル広告620億円、デジタルサイネージ210億円です。

つまり、リテールメディア市場の中心は、ECサイト内の検索広告、商品広告、クーポン、購買データを利用したオンライン広告です。

「リテールメディアが1兆円市場になる」という数字を見て、店頭サイネージだけが1兆円規模へ成長すると考えるのは誤りです。

出典:CARTA HOLDINGS「リテールメディア広告市場調査」

リテールメディアの主な種類

リテールメディアは、広告が配信される場所によって、オンサイト、オフサイト、インストアなどに分けられます。

ECサイト内の広告

Amazonや楽天市場などのECサイトで、商品検索結果、カテゴリページ、商品詳細ページなどへ広告を表示します。

検索キーワードと連動するスポンサー商品、レコメンド広告、バナー広告などが代表例です。

商品を探している人に広告を出せるため、購買に近いリテールメディアです。

アプリ・クーポン・メール

小売企業のアプリ、メールマガジン、プッシュ通知などを使って、商品情報やクーポンを配信します。

過去の購買履歴や会員情報を利用して、対象者を絞った配信を行える点が特徴です。

店頭デジタルサイネージ

店舗の入口、通路、商品棚、レジ前などに設置された画面へ広告を配信します。

購入直前の場所で商品を訴求でき、曜日、時間帯、店舗、地域によって内容を変更できます。

店頭POP・棚前広告・体験型メディア

POP、電子棚札、サンプリング、店内音声広告、商品の香りを体験する装置なども、広告商品として販売される場合はリテールメディアに含まれます。

実際の商品を手に取れる売場の強みを生かし、視覚だけでなく、音や香りを使った訴求も可能です。

購買データを利用した外部広告

小売企業のECサイトやアプリだけでなく、外部のWebサイト、SNS、動画広告などへ広告を配信する方法もあります。

小売企業が持つ購買データを匿名化したうえで、特定の商品を購入した人や、購入する可能性がある人へ広告を届けます。

このような小売企業の外側へ配信する広告は、オフサイト広告と呼ばれます。

リテールメディアネットワーク(RMN)とは

リテールメディアネットワークは、英語でRetail Media Network、略してRMNと呼ばれます。

小売企業が持つECサイト、アプリ、メール、店舗、購買データなどをまとめ、広告主が利用できる広告ネットワークとして運営する仕組みです。

一つの小売企業が独自に運営する場合もあれば、複数の小売企業の広告枠やデータを広告事業者がまとめて販売する場合もあります。

リテールメディアは広告手法全体を表す言葉で、RMNは広告枠・データ・配信・測定をまとめて運営する広告ネットワークを表します。

広告主にとっては、複数の店舗やECサイトへまとめて広告を配信できる一方、各ネットワークで広告指標や測定基準が異なる場合があります。

国内外のリテールメディア事例

リテールメディアは、海外ではAmazonやWalmartが先行し、日本でもEC企業、コンビニ、スーパー、ドラッグストアなどが取り組みを進めています。

企業・領域 主な接点 特徴
Amazon Ads 検索結果・商品ページ・動画など 商品検索から購入までEC内でつながる
Walmart Connect EC・店舗・アプリ・店内広告 オンラインと実店舗の接点を横断する
楽天 楽天市場・会員・ポイント・各種サービス グループ内の会員基盤と購買接点を活用する
コンビニ・スーパー アプリ・店頭サイネージ・購買データ 日常的な購買へ近い場所で接触できる
ドラッグストア 会員アプリ・クーポン・棚前広告 化粧品・医薬品・日用品との相性が高い

事例を見るときは、企業名や設置画面数だけでなく、どのデータを使い、広告接触から購入までをどのように測定しているかを確認する必要があります。

リテールメディアのメリット・デメリット

立場 メリット デメリット・課題
小売企業 店舗やデータから広告収入を得られる 広告を増やしすぎると買物体験や信頼を損なう
広告主・メーカー 購買に近い場所で商品を訴求できる 媒体ごとにデータや測定基準が異なる
生活者 興味に合う商品やクーポンを見つけやすい 広告と自然なおすすめを区別しにくい
広告代理店 EC・店頭・データを横断した提案ができる 単なる広告枠の仲介では価値を出しにくい

リテールメディアの大きな魅力は、広告と購買の距離が近いことです。

しかし、その強さは同時に、広告費を支払える企業の商品が優先されやすいという問題につながります。

リテールメディアへ広告を出稿する流れ

  1. 広告の目的を決める
    認知拡大、新規購入、再購入、来店促進など、何を達成したいかを整理します。
  2. 対象商品と生活者を決める
    どの商品を、どのような購入者へ届けるのかを明確にします。
  3. 小売企業と広告メニューを選ぶ
    EC広告、アプリ、クーポン、店頭サイネージなどから、目的に合う接点を選びます。
  4. データの利用範囲を確認する
    どの購買データを使用できるか、個人情報や同意管理はどうなっているかを確認します。
  5. 広告を制作・配信する
    EC、アプリ、店頭など、それぞれの場所に適した広告を制作します。
  6. 広告効果を検証する
    表示回数、クリック、クーポン利用、購入、新規購入、再購入などを確認します。

媒体を選ぶ前に、広告の目的と評価指標を決めておくことが重要です。

「購買データで測れるから出稿する」のではなく、そのデータを見て次に何を判断するのかまで設計する必要があります。

広告効果はどこまで測定できるのか

リテールメディアでは、広告に接触した人が、その後商品を購入したかを確認しやすくなります。

しかし、広告接触後に購入したことと、広告によって購入したことは同じではありません。

例えば、広告に接触した人が商品を購入しても、もともと購入する予定だった可能性があります。

売上が増えた場合も、広告以外に次の要因が考えられます。

  • 値引きやポイントキャンペーン
  • 棚位置や商品フェース数の変更
  • 競合商品の欠品
  • 天候や季節の変化
  • テレビCMやSNS広告
  • 商品の在庫量

広告によって新たに生まれた購入を確認するには、非接触者や非実施店舗などの比較対象が必要です。

リテールメディアの問題点

リテールメディアは成長市場ですが、広告主、小売企業、生活者のすべてにとって万能な仕組みではありません。

広告とおすすめの区別が分かりにくい

ECサイトの検索上位や店頭の良い場所にある商品を、生活者は「人気商品」や「店舗がおすすめする商品」だと受け取る可能性があります。

実際には広告費による優先表示であれば、有料露出であることを分かりやすく示す必要があります。

広告予算の大きい企業が有利になる

広告費を多く支払える企業の商品が、EC検索や店頭の良い場所を占める可能性があります。

その結果、広告費を抑えて安くて良い商品を作る企業や、地域の中小メーカーが不利になることも考えられます。

メーカーが出稿を断りにくい場合がある

リテールメディアを販売する小売企業は、同時に商品の仕入れ、棚割り、販売企画を決める立場でもあります。

そのため、メーカーが広告を断れば、今後の仕入れや売場で不利になるのではないかという不安を持つ可能性があります。

広告代理店は何を担うべきか

リテールメディアの拡大は、広告代理店にとって新しい提案機会になります。

一方、小売企業が広告主と直接取引し、自社で広告配信や効果測定まで行うようになれば、広告枠を仲介するだけの代理店は必要とされにくくなります。

広告代理店に求められるのは、枠を販売することではなく、次のような全体設計です。

  • 複数のリテールメディアを比較する
  • EC、アプリ、店頭を横断して設計する
  • テレビ、SNS、OOHなど他媒体と組み合わせる
  • 広告接触後の増分効果を検証する
  • 広告量と買物体験のバランスを取る
  • 広告主、小売企業、生活者の利害を調整する

特に重要なのは、広告主の商品を目立たせることだけでなく、生活者にとって買いやすい売場を守ることです。

リテールメディアに関するよくある質問

リテールメディアとデジタルサイネージの違いは?

デジタルサイネージは、リテールメディアの一種類です。

リテールメディアには、店頭サイネージだけでなく、ECサイト内広告、アプリ、クーポン、メール、店内音声、購買データを使った外部広告なども含まれます。

リテールメディアは店頭広告だけですか?

店頭広告だけではありません。

2025年の国内市場6,066億円のうち、EC事業者の領域が5,236億円を占めています。国内市場の中心はECサイト内やオンライン上の広告です。

リテールメディアとEC広告の違いは?

EC広告は、リテールメディアの一部です。

リテールメディアは、ECサイトだけでなく、実店舗、アプリ、会員データ、購買データを活用した外部配信まで含む、より広い概念です。

リテールメディアは広告効果を正確に測れますか?

広告接触後の購入は把握しやすくなりますが、その広告がなければ購入しなかったかまでは、単純な購買データだけでは判断できません。

非接触者や非実施店舗との比較など、増分効果を確認する設計が必要です。

リテールメディアは今後も伸びますか?

EC利用の拡大、小売企業の広告事業への参入、購買データへの需要を考えると、市場は今後も拡大すると予測されています。

ただし、小売企業ごとのデータ、配信、測定基準が統一されていないことや、広告量が増えすぎた場合の顧客体験など、解決すべき課題もあります。

まとめ|リテールメディアは小売の売場とデータを広告に変える仕組み

リテールメディアとは、小売企業が持つ店舗、ECサイト、アプリ、会員情報、購買データなどを広告媒体として活用する仕組みです。

商品を探しているときや、店頭で商品を選んでいるときなど、購入に近い場所で広告を届けられる点が大きな特徴です。

  • 2025年の国内市場は6,066億円
  • 2029年には1兆3,174億円へ拡大する予測
  • 市場の中心はECサイト内やオンラインの広告
  • 店舗・アプリ・購買データも広告商品になる
  • 小売企業には新収益、広告主には購買直前の接点が生まれる
  • 広告とおすすめの区別や売場の公平性には課題がある

リテールメディアは、テレビ、検索広告、SNS、OOHなどをすべて置き換える広告ではありません。

認知から購買までの流れの中で、特に購入へ近い接点を担う広告です。

他の広告媒体と組み合わせ、広告接触後の増分効果を冷静に検証することで、価値を発揮します。

一方で、小売業は本来、生活者が商品を比較し、選ぶ場所です。

広告収入を優先するあまり、広告費を支払った商品だけが目立つ売場になれば、小売企業が長年築いてきた信頼を損なう可能性があります。

リテールメディアの成長に必要なのは、
広告収益と買物体験を両立させる設計です。

小売企業、広告主、広告代理店だけでなく、生活者にとっても価値のある仕組みにできるかが、リテールメディア市場の今後を左右するでしょう。