リテールメディアとは、
『小売業者が自社の店舗内やオンラインプラットフォームを活用して広告を展開するメディア』
のことです。
このコンセプトは、小売業者が持つ顧客データを活用して、
ターゲットに合わせた広告を店舗内やウェブサイト、アプリなどで展開することです。
2022年頃から注目され、広告代理店も力を入れ始めており、2024年以降も注目される分野です。
“リテールメディアによる小売業界の広告革命とは?
リテールメディアの利点は、
顧客の購買行動や嗜好を反映できるため、『高いターゲティング精度』と『効果的な広告展開』が実現できる点です。

例えば、顧客の購入履歴に基づいたパーソナライズされた広告を提示することができます。
これにより、顧客体験の向上や、効率的なマーケティングの実現が可能になります。
結果として、売上の増加やブランドロイヤルティの強化につながる可能性が考えらています。
日本のリテールメディア市場規模
では、日本のリテールメディアの市場を見てみましょう。
2021年:
日本のリテールメディア市場は90億円と評価されています。
この数字は、『デジタル技術の進化』と『オンラインショッピングの普及』が相まって、
新たな広告手法としてリテールメディアが注目された結果と考えられます。
2022年:
翌年には、135億円にまで成長しました。
この成長は、COVID-19パンデミックの影響によるオンライン消費の増加と、
小売業者によるデジタル広告への意識の高まりが起因したと言われています。
2026年予測:
2026年には、市場規模は約805億円に拡大すると予測されています。
この大幅な成長は、『技術の進歩が進む』こと、『データ分析の高度化』が進むことにより、
効果的なターゲティング能力の向上により実現されると思われます。
グローバル市場規模
一方で、日本より取り組みの早い海外に目を向けてみましょう。
海外の方が日本より成長が早いのは良くあることです。
2023年:
全世界のリテールメディア市場は約20兆円に達すると予測されています。
凄い規模です。

東京都の年間予算と、ハンガリーの国家予算が約7兆円程度なので、どれだけの規模か?分かりますね。
この膨大な規模は、世界中の多様な市場におけるデジタル広告の需要の増加を反映しています。
アメリカ市場:
2023年におけるアメリカ市場の支出額は約6兆円で、前年比57.3%の増加を示しています。

6兆円は、ほぼ日本の年間の広告予算です。アメリカでは、リテールメディアだけで達成しています。
この急成長は、アメリカにおけるeコマースの拡大と、データ駆動型の広告戦略の採用が促進要因となっていると言われています。
成長の背景と要因
その成長の背景と要因は下記の5点に集約でいます。
1.ECサイトの急成長
オンラインショッピングの急激な普及により、ECサイトやオンラインプラットフォームが多くの消費者のデータを収集できるようになり、そのデータを活用した広告ターゲティングが可能に。
リテールメディアはこうしたデータを使って、消費者行動に基づいた高精度の広告を展開を可能にしています。
2.データドリブンマーケティングの普及
リテールメディアは、購入履歴やオンライン行動データなどの豊富な消費者データを活用し、マーケティングの精度を高めることができます。
結果として、企業は、広告の効果測定やターゲティングを強化できるため、リテールメディアの価値が向上しています。
3.オムニチャネル戦略の拡大
オンラインとオフラインを融合させたオムニチャネル戦略が普及する中で、リテールメディアも重要な役割を果たしています。
オンライン広告と店舗内広告を連携させ、消費者に一貫性のあるメッセージを届けることで、顧客との関係性の強化を可能にしています。
4.パーソナライズされた広告の需要増加
消費者は自分に関連性のある広告を求める傾向が強まっています。
リテールメディアは、顧客の興味や購買履歴に基づいて、パーソナライズされた広告を提供できるため、広告効果が高まり、広告主からの需要が増加しています。
5.新しい収益モデルとしての注目
小売業者は、広告スペースの提供を新たな収益源として活用し始めています。
代表的な存在であるドラッグストアなどは、店舗戦略が限界に達している中、新たな収入源として
リテールメディアを導入することで、商品の販売だけでなく、広告を通じた追加収益を得ることができます。
このように、大手小売企業の積極的に参入が将来も見込めます。

次に、リテールメディアに積極的に取り組んでいる代表的な企業の事例を紹介しましょう。
国内外でリテールメディアに力を入れている企業の取り組みを見てみると、
それぞれの市場での戦略や成功例を学ぶことができます。
特に、データ分析を活用したパーソナライズ広告の展開や、オムニチャネル戦略の一環としてのリテールメディアの活用が見られます。
アマゾン(Amazon)
最初に取り上げるべきはアマゾンです。
オンラインリテールメディアの先駆者であり、そのプラットフォームを通じて高度なパーソナライズ広告を展開しています。
顧客の検索履歴、購買履歴、閲覧データを基に、関連性の高い商品の広告を表示します。
また、アマゾンはサードパーティにも広告スペースを提供し、彼らが自身の商品を効果的に宣伝できるようにしています。
アマゾンのリテールメディア戦略の大きな特徴は、その広範なデータ活用とアルゴリズムによる精緻なターゲティングです。
リテールメディアは、従来の物理店舗に限定されるものではなく、ECサイトやオンラインマーケットプレイスも含む広範な概念へと進化しています。
特にAmazonのように、オンラインで圧倒的なシェアを持つ企業は、物理的な店舗を持っていなくても、広告プラットフォームとしての役割を果たすことでリテールメディアの一部と見なされています。
楽天
日本では楽天の存在も大きいでしょう。
楽天市場は、オンラインショッピングプラットフォームにおいて、リテールメディアの戦略を活用しています。
楽天は、顧客の購買データや検索履歴を基に、パーソナライズされた広告を表示しています。
また、楽天のポイントシステムと組み合わせることで、消費者の再訪を促し、購入へと導く戦略をとっています。
コンビニエンスストア
コンビニエンスストアチェーンも、店内デジタルサイネージを活用したリテールメディアを展開しています。
店内の画面で、天気や時間帯に応じた商品の広告を表示することで、顧客の購入意欲を刺激しています。
ファミリーマートのレジ上の大きなサイネージは多くの方に印象的だと思います。
ユニクロ
アパレル小売業のユニクロは、店舗とオンラインの融合によるリテールメディア戦略を展開しています。
店舗内のデジタルディスプレイやオンラインストアを通じて、顧客の購買データや好みに基づいた推薦商品を表示することで、顧客体験を向上させています。
CVSヘルス
アメリカの大手ドラッグストアチェーンであるCVSヘルスは、
店舗内のデジタルサイネージやオンラインプラットフォームを通じてリテールメディアを展開しています。
これにより、健康関連商品やサービスの効果的な広告が可能になっています。
マツモトキヨシ
マツモトキヨシのような日本の主要なドラッグストアチェーンもリテールメディアを活用しています。
これらの店舗では、店内のデジタルサイネージやレジ周りのディスプレイを使用して、時間帯や季節に応じた商品のプロモーションを行っています。
また、顧客の購買データを活用して、店舗ごとに異なる商品アソートメントやプロモーションを実施し、地域ごとの顧客ニーズに応じたマーケティングを展開しています。
一部のドラッグストアでは、ポイントカードやアプリを通じて収集したデータを基に、パーソナライズされたクーポンやオファーを顧客に提供する取り組みも見られます。
では、最後にリテールメディアのメリット・デメリットを、活用する企業、広告主、広告代理店の立場から考えてみましょう。