トリプルメディアという言葉をご存じでしょうか。
広告やマーケティングに関わっている人なら、一度は聞いたことがあるかもしれません。
企業と生活者の接点を、
- ペイドメディア
- オウンドメディア
- アーンドメディア
の3つに分けて考える方法です。
考え方そのものは今でも使えます。
ただ、2026年のメディア環境をそのまま3つの箱に入れようとすると、少し無理が出てきます。
SNSはどこに入るのか。
YouTubeはどうなのか。
インフルエンサーは広告なのか、口コミなのか。
Google検索やAI検索で自社情報が紹介された場合はどう考えるのか。
昔より境界線がかなり曖昧になっています。
だから現在のトリプルメディアは、
「メディアを3つに分類するための考え方」ではなく、「顧客との接点をどうつなげるかを整理するための考え方」
として使った方が実務的です。
そもそもトリプルメディアとは?
まず基本だけ整理しておきます。
トリプルメディアとは、企業が利用するメディアを大きく3つに分ける考え方です。
| 分類 | 意味 | 代表例 |
|---|---|---|
| ペイドメディア | 企業がお金を払って利用する媒体 | テレビ、新聞、Web広告、SNS広告、OOHなど |
| オウンドメディア | 企業自身が管理・運営する情報発信媒体 | Webサイト、ブログ、メールマガジンなど |
| アーンドメディア | 第三者による評価や拡散によって生まれる接点 | 口コミ、レビュー、SNS投稿、報道など |
以前は、この3つを比較的きれいに分けることができました。
企業が広告費を払って認知を取る。
興味を持った人を自社サイトへ誘導する。
良い商品なら口コミやSNSで広がる。
「ペイド → オウンド → アーンド」
という流れです。
しかし、今の生活者はそれほど一直線には動きません。
2026年は3つにきれいに分けにくい
例えばInstagramを考えてみます。
企業自身の公式アカウントで投稿すれば、オウンドメディア的な役割があります。
その投稿を広告として配信すればペイドです。
第三者が商品について投稿すればアーンドになります。
同じInstagramの中に、3つの役割が混在しています。
YouTubeも同じです。
企業自身が動画を投稿する。
YouTube広告を配信する。
クリエイターが商品を紹介する。
すべて同じプラットフォーム上で起きます。
さらに2026年には、Google Search ConsoleでInstagram、TikTok、X、YouTubeの投稿がGoogle検索やDiscoverでどのように見つかっているかまで確認できるようになりました。
つまり、
SNSで発信したコンテンツが、検索でも発見される
という環境になっています。
もはや「検索はオウンド、SNSはアーンド」と単純には整理できません。
ペイドメディアは今も重要。ただし役割が変わった
ペイドメディアは、企業がお金を払って利用する広告です。
テレビ、新聞、雑誌、ラジオ。
検索広告、ディスプレイ広告、SNS広告、動画広告。
OOH、DOOH、交通広告。
現在も企業のマーケティングにおいて非常に大きな役割を持っています。
2025年の日本の総広告費は8兆623億円。
インターネット広告費だけでも4兆459億円あり、総広告費の50.2%を占めています。
広告そのものが弱くなっているわけではありません。
ただ、広告の役割は少し変わっています。
以前は広告だけで認知から購入まで動かすこともできました。
今は広告を見たあとに、検索する。
SNSを見る。
YouTubeを見る。
口コミを見る。
AIに質問する。
そこから公式サイトへ行く。
こうした動きが普通になっています。
ペイドメディアだけで完結させるのではなく、その後どこへ動いてもらうかまで考える必要があります。
オウンドメディアも「自社サイトだけ」ではない
オウンドメディアというと、以前は企業サイトやブログを指すことが多くありました。
現在も、自社サイトは重要です。
自社で情報を管理できる。
検索から集客できる。
商品説明や問い合わせ導線を自由に設計できる。
こうした強みがあります。
ただ、企業が自分で発信する場所はWebサイトだけではなくなりました。
Instagram。
YouTube。
TikTok。
X。
メールマガジン。
これらも企業自身が運営するという意味では、オウンド的なメディアです。
ただし、大きな違いがあります。
SNSアカウントは自社で運営していても、プラットフォーム自体は自社のものではありません。
アルゴリズムが変わる。
利用規約が変わる。
投稿の表示回数が変わる。
場合によってはアカウントが停止される。
こうしたリスクがあります。
その意味では、完全なオウンドメディアとは言い切れません。
だからこそ、自社サイトと外部プラットフォームの両方を持つことが重要になります。
アーンドメディアは「口コミ」だけではなくなった
アーンドメディアも大きく変わりました。
以前は、口コミやレビュー、SNSでの自然な拡散などを指すことが中心でした。
現在はそれだけではありません。
- SNSでのユーザー投稿
- レビューサイトでの評価
- メディア記事
- ニュースサイトでの紹介
- クリエイターによる投稿
- 第三者サイトからの引用
など、第三者によって生まれる情報接点はかなり広がっています。
さらにAI検索の普及によって、新しい接点も生まれています。
GoogleのAI OverviewsやAI Modeなどでは、複数のWebサイトから情報を整理し、回答とともにリンクが表示されることがあります。
企業自身が広告を出したわけでも、自社サイトだけで情報が完結したわけでもありません。
第三者的な検索システムによって情報が拾われ、ユーザーへ紹介されるわけです。
これを従来のアーンドメディアとまったく同じものとして扱う必要はありません。
ただ、
自社が直接コントロールできない場所で評価・引用・紹介されることの重要性が高まっている
という点では共通しています。
インフルエンサーはペイド?アーンド?
トリプルメディアを考えるとき、特に分かりにくいのがインフルエンサーです。
企業がお金を払って投稿してもらえば、基本的にはペイドです。
商品提供などを受けてPR投稿する場合も、企業との関係がある以上、純粋なアーンドとは言いにくいでしょう。
一方で、クリエイターが自発的に商品を紹介した場合はアーンドに近くなります。
さらに、その投稿を企業が広告として二次利用すればペイドになります。
ひとつのコンテンツが、
アーンド → ペイド
と役割を変えることもあります。
こうした例を見ると、トリプルメディアを厳密な分類として使うこと自体に限界があることが分かります。
重要なのは「分類」ではなく「接点をつなぐこと」
では、トリプルメディアはもう使えないのでしょうか。
私はそうは思いません。
企業の情報接点を整理するとき、
「お金を払って届けるもの」
「自分たちで発信するもの」
「第三者によって広がるもの」
という3つの考え方は今でも分かりやすいからです。
ただし、重要なのは分類することではありません。
3つをどうつなぐかです。
例えば、
OOHで商品を知る。
↓
SNSで検索する。
↓
インフルエンサーの投稿を見る。
↓
Googleで商品名を検索する。
↓
公式サイトを見る。
↓
YouTubeでレビューを見る。
↓
購入する。
↓
自分もSNSへ投稿する。
実際の顧客行動は、このように複数のメディアを行ったり来たりします。
「ペイドからオウンドへ誘導し、最後にアーンドで拡散する」という一本道ではありません。
現在のメディア戦略は、一本道より循環型に近くなっています。
SNSと検索も別々ではなくなっている
以前は、検索とSNSは比較的別々の集客経路として考えられていました。
Googleから自社サイトへ来る人。
InstagramやXから来る人。
という分け方です。
しかし、ここも変わっています。
Googleは2026年、Search ConsoleでInstagram、TikTok、X、YouTubeの投稿がGoogle検索、Discover、Googleニュースでどのように見つけられているかを確認できる機能を導入しました。
つまりSNS投稿も、Google検索から発見されるコンテンツとして扱われています。
逆に、Google検索で知った商品をSNSで確認する人もいます。
検索、SNS、動画、Webサイトを完全に別々のチャネルとして考えること自体が難しくなっています。
「どの媒体から来たか」だけではなく、「複数の接点を通じてどう意思決定したか」を見る必要があります。
AI検索も新しい接点として考えた方がいい
2026年のメディア戦略を考えるなら、AI検索も無視できません。
ユーザーはGoogle検索だけでなく、AIに質問して商品やサービスについて調べるようになっています。
Google自身もAI OverviewsやAI Modeを検索に組み込んでいます。
GoogleはAI検索についても、従来と同じように、独自性がありユーザーに価値を提供するコンテンツを重視すると説明しています。
ここでも重要なのは、単に「AI対策をする」ことではありません。
企業が、
- 独自データ
- 専門的な知識
- 実際の事例
- 経験に基づく情報
- 明確な商品情報
を発信しておく。
その情報が検索やAIを通じて発見される。
これも新しい顧客接点です。
広告代理店も「媒体別提案」だけでは足りなくなる
広告代理店側にも変化が必要です。
テレビならテレビ。
WebならWeb。
OOHならOOH。
SNSならSNS。
それぞれを別の商品として提案するだけでは、顧客の実際の行動と合わなくなっています。
例えばOOHを提案する場合でも、
街頭ビジョンで見せる。
その映像を撮影する。
SNSへ展開する。
ハッシュタグや検索を促す。
自社サイトへつなぐ。
ユーザー投稿を二次活用する。
ここまで考えれば、OOHは単なる「屋外広告枠」ではありません。
複数の接点を動かす起点になります。
広告代理店の提案も、媒体枠を売ることから、顧客接点を設計する仕事へ変わっていくでしょう。
トリプルメディアを2026年に使うなら、この3点だけ見ればいい
トリプルメディアを実務で使うなら、細かく分類するより、次の3つを考えれば十分です。
- どこで最初に知ってもらうのか
- どこで詳しく理解してもらうのか
- どこで第三者の評価や信頼を得るのか
これを整理したうえで、それぞれをつなぎます。
例えばBtoB企業なら、
検索広告で知ってもらう。
↓
自社の記事で専門性を理解してもらう。
↓
導入事例を読む。
↓
問い合わせる。
↓
導入後の事例を公開する。
↓
その事例が検索やSNS、AIなどから再び発見される。
こうした循環を作ります。
トリプルメディアという言葉を使うかどうかは、それほど重要ではありません。
顧客との接点が分断されていないかを見るための道具として使えば十分です。
まとめ|トリプルメディアは古い。でも、考え方はまだ使える
トリプルメディアは、ペイド、オウンド、アーンドの3つにメディアを分ける考え方です。
この分類そのものは、現在でも分かりやすい整理方法です。
ただ、2010年代のように3つを完全に分けて考えるのは難しくなりました。
SNSの中にペイドもオウンドもアーンドもあります。
検索とSNSもつながっています。
AI検索という新しい情報接点も生まれています。
ユーザー自身も、複数のメディアを行ったり来たりしながら商品やサービスを選んでいます。
だから、2026年のトリプルメディアで重要なのは、
「これはペイドか、オウンドか、アーンドか」と分類することではありません。
それぞれの接点をどうつなぎ、顧客の行動につなげるかです。
広告。
SNS。
検索。
動画。
口コミ。
AI。
自社サイト。
これらを別々の施策として考えるのではなく、ひとつの顧客体験として設計する。
トリプルメディアという少し古い考え方も、そこまで広げて使えば、今でも十分役に立つと思います。

